エタップ・ド・ツールは最高峰のロード・レース、ツール・ド・フランスの山岳コースをアマチュアが参加する事のできるレースです。2010年のエタップ・ド・ツールはフランスの南、ピレネー山脈で7月18日(日)に行われます。このレースの4日後にプロ選手が同じコースを走ります。走行距離174km、累積高度は4,000mを登る過酷なレースです。レースはピレネー山脈の入口に位置するポーという歴史的な街からスタートし、ツールマレ峠(2,115m)、マリーブランク峠(1,035m)、スロール峠(1,474m)という名高い峠を越えていきます。
ドミニクさんは友人のジェームス・ノットさんと共に、スポンサーたちの恩恵を 受けることとなる日本の小児がんの子ども達の思いを一身に背負い、非常に厳しいコースを完走しました。約300万円という、彼らがタイラー基金のために上 げた収益金は、私たちが支援している多くの子どもたちや家族の精神的な支えとなるべく利用されます。
レース後のレポート
ドミニク・ヘンダーソン
「トゥルマレ峠(Tourmalet)ノ チョウジョウ ツウカ ミチ ハ トテモ ヨイ モンダイ ナク ツウカ」
こ れはアルフォンス・スタインズが1910年、ツール・ド・フランスのルートを探していたときに上司に送信した電報です。彼が電報で記さなかったことは、雪 があまりにも酷かったがために車をおいて歩いて前進せざるを得なかったということ。彼は道に迷って渓谷で落下、午前4時に救出されたそうです。レースで山 頂に初めて辿り着いたサイクリストは(1日あたり走行距離は289キロ、トゥルマレ峠はそのうちの1つの峠に過ぎませんでした。)そこから主催者に向かっ て「殺人鬼!」と叫んだそうです。
エタップ – 7月18日、日曜日、朝:
スタートラインを越えた私は、自分自身に本当にエタップ(L’Etape)にいるんだと言い聞かせた。思えば何年も前に東京のスピニング・クラスで エタップ 2006にむけてトレーニングしていた、ちょっとイッちゃってる奴からエタップについて聞いたのは遥か昔のことだった。しかもその「イッちゃってる奴」が 今私の真横で自転車を漕いでいる。
最 初の本格的な上りはマリー・ブランク峠(Col de Marie-Blanque)。既に50キロ進んでいたにも関わらず、まだ集団はあまり散らばっていなかった。自分のリズムがつかめない混雑した登り坂を 進むことは結構厳しい。下りはとても綺麗で、道が開けたときの風景にハイジとヤギがいれば完璧だった。スロール峠(Col de Soulor)に近づいていくと、ベレー帽をかぶり、ストライプのシャツを纏ったフランス人がアコーディオンでセレナーデを奏でながら我が集団を迎えてく れた。スロールを進むにつれ、道はより広がってくるが急勾配になってくる。最後の数キロは灼熱で、大抵8%だった。スロール からの下りは、速く、そして本当に素晴らしかった。
そしてとうとう来てしまった:トゥルマレ峠(Le Col du Tourmalet)(2115メートル)だ。意外と気づかないのだが、実は15キロにわたって上り勾配(傾斜2-5%)が続いており、これがリューズ サン ソヴール(Luz-St.-Sauveur)のトーナメントの公式スタート地点までつながっている。トゥルマレ峠は全長18.6キロで、標高1400メー トル(平均傾斜7.4%)まで登る。160キロも進むと気温36℃でもそれ以上に感じられる。まさに聞いていたとおり、本当に厳しかった。昇っていく中、 観客はこぞってライダーに冷たい水をかけてくれた(山を流れる川の水は本当に冷たかった)。
最 後の水分補給所は山頂からたった10キロのところにあったが、まるでエベレスで最後のアタック「突撃」が行われる場所に挑むにあたってはられる最後のベー ス・キャンプのような感じに思えた。山頂から60mのところで足がつってしまい、数秒間停止しなければならなかった。私の窮状を見兼ねた親切な観客が千人 力のような力で私を押してくれ、おかげで私はまるで軽々と登りをこなしてきたかのようなスピードでゴール・ラインを超えることができた。
私は9時間30分をサドルの上で費やし、181キロを自転車で走り続け、そして累積高度は合計4400メートルを越えた。水分補給時間を差し引いた トゥルマレ峠越えの時間は2時間8分だった。私達の4日後にここを通過したツール・ド・フランス2010の優勝者アルベルト・コンタドールやアンディ・ シュレクは49分で越えてしまったが。
痛みや苦しみがあったにもかかわらず、私は一度たりとも何故このレースに参加しているのかを自問したことはなかった。観客は素晴らしく、道中フラン ス語で「頑張れ」と声援を掛けてくれた。しかし私の頭から離れないのは、山頂から3キロほどのところでたった一人で皆に拍手を送っていたイギリス人男性の ことだ。そんな彼に有難うと言うと、私がイギリス人だと気付いた彼は言った:「いいや、こちらこそ有難う、そしてよくやった。君たちがやったことは人間の 力を超えていることだ」と。
ジェームスと思いやりのあるタイラー基金の素晴らしき支援者たち、本当に、本当に有難う。
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