2011年3月4日

ベイリーを書いた作文が入賞

シャイン・オン!セラピードッグ・プログラム ハンドラーの森田優子からのレポート

シャイン・オン!セラピー・ドッグのベイリー
今月は、ベイリーとの出会いを財団法人日本動物福祉協会主催の動物愛護作文コンテストに応募し、小学生の部で「昭和会館賞」を受賞した子の作文を紹介します。東京の授賞式で賞状をもらい、その賞状をベイリーに見せに来てくれました。そして、涙を浮かべて作文を読んでくれました。

「笑顔配達犬ベイリーとの出会い」

今年の七夕の日に手術をすることになり入院をしたのは静岡県立こども病院でした。

この病院は特別な治療をする子ども達が全国から集まる病院です。

大きな駐車場には、関西、関東、東北地方のナンバープレートの車もあります。

待ち合室や外来には様々な病状の赤ちゃんから学生服を着た子達が診察を待っています。

入院の日、長い長い迷路のような廊下を重い足取りで病棟に向いました。入院手続きが済みあっという間に消灯時間になり、よく眠られないまま朝になりました。足の靭帯の手術をするのでしばらくの間、歩く事が出来なくなるぼくは手術が二番目だったので待ち時間に病棟の中を歩いてみました。

ナースステーションの前にある掲示板に「ベイリーありがとう」「ベイリーまた会いたい」等と書かれたメッセージカードが貼ってありました。その時は緊張とう案でただ見ているだけでした。

手術が終わり痛みで気力がなくなり二、三日はイライライして、膝上までのギプスがぼくの行動を邪魔していました。そんな中病室のあちらこちらから、「ベイリー!」と呼ぶ声が聞こえてくるようになりました。

入院している子どもの中には、まだまだ親から離れられなくてさびしさのあまり一日中泣いている子の声が響きます。「お母さん、お母さん」とのどが腫れるほど泣き叫んでいた、ぼくの斜め前の病室から笑い声が聞こえてきました。「何があったのだろう?」と思い車イスに踏ん張って乗り移りやっと廊下に出られました。

廊下の一番奥の方に白い大きな犬が歩いていました。この犬がベイリーです。ベイリーはセラピードッグでまだ二才になったばかりのゴールデンレトリバーです。オーストラリアで産まれ生後二週間目からトレーニングを始めました。六ヶ月の時ハワイのトレーニングセンターに入り二才まで専門的なトレーニングを受け来日したことを後から知りました。

病室のあちらこちらからベイリーを呼ぶ声が聞こえてきます。今日はベイリーが来る日だと分かったぼくは車イスに乗り込み廊下に出ました。ベイリーは人気者なのですぐには来られません。みんなが待っているのですから。

やっとベイリーに会えました。静かに足音を立てずにトレーナーの歩調に合わせてゆっくり、ゆっくりぼくの所に来てくれました。「伏せ」をしてぼくに寄り添って温かい優しい目で語りかけてくれました。犬好きのぼくは思わず笑顔になりました。「入院してから一番の笑顔だね」と母が言いました。

どこを触ってもなでてもベイリーは静かに「待て」をしています。ベイリーは決して怒らない穏やかな犬で子どもといる事が大好きな性格だと教えて頂きました。ベイリーといるだけで心が温かくなり思わず笑顔になれる、薬を飲んで治療をして病気は治っていきますがベイリー達セラピードッグは良くなる力を与えてくれます。

ベイリーには入院中一度しか会えなかった。でもその一度が七夕の日に手術をして九月の登校日にランドセルを背負って、しっかりと歩けるのだろうかという不安のぼくに頑張る力を与えてくれました。ベイリーありがとう、笑顔と勇気をもらいました。六年生のぼくは後半年で小学校を卒業しますがこの夏の経験と出会いがこれからのぼくを強くしてくれるはずです。犬は友達、仲間です。ベイリー達、笑顔配達犬の活躍を応援してください。きっと幸せの風を運んでくれるはずです。